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大阪高等裁判所 昭和38年(ラ)12号 決定 1963年5月20日

抗告人 田辺秋夫(仮名)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣旨並びに抗告理由は別紙記載のとおりである。

当裁判所の判断

本件記録中の遺産分割協議書と題する書面の複写、亡相馬辰吉の除籍謄本、相馬文男と田辺秋夫の各戸籍謄本、相馬文男に対する審問調書及び第一、二回本人尋問調書、相馬千代子の本人尋問調書、田辺秋夫の第一、二回本人尋問調書、証人田辺静男、同山本実の各尋問調書の記載によれば、次の事実が認められる。

相馬辰吉は昭和三四年一月二三日本籍地の京都府亀岡市吉川町吉田越田○○番地で死亡し同人につき遺産相続が開始した。相続人は亡辰吉の長男相馬文男、次女相馬千代子及び四男田辺秋夫の三人であり、遺産の内容は(一)同市吉川町吉田越田○○番地所在家屋番号二二番木造瓦葺二階建居宅、建坪三四坪六合七勺、二階坪六坪、木造瓦葺平家建物置建坪一一坪二合二勺、木造瓦葺平家建便所建坪一坪四合四勺、(二)金二万円、(三)同市吉川町吉田沢○○番地田一反四畝二一歩及び(四)右同所○○番地田五畝一歩である。右相続人三名は昭和三五年一月七日頃右遺産の分割につき各自の自由な意思に従つて協議を遂げた結果前記(一)の家屋を相続人相馬文男の、(二)の金員を相馬千代子の各単独所有とし、前記(三)及び(四)の田はいずれもこれにつき右相続人三名の共有関係を設定する旨の合意が成立し、右協議の結果を記載した同日付遺産分割協議書を作成し各相続人においてこれに署名押印した。以上の事実が認められ、その記載に照応する協議及びその結果としての合意は何等実質上共同相続人間に成立したことがなく右書面は単に相続人の一人である田辺秋夫がその個人債務につき債権者から強制執行を受けるのを免れるための手段としてその単独の意思に基いて作成したものにすぎない旨の抗告人主張の事実はこれを肯認すべき何等の証拠がなく、その他前記認定を覆えすに足りる証拠はない。

そして遺産を組成する各個の動産不動産その他の財産につき共同相続人の協議をもつてその中のある物を相続人中の一人の単独所有とし、爾余の物につき共同相続人による共有関係を設定するものと定めることも遺産分割の方法として適法と認むべきものであり、かくして設定せられた共有関係は共同相続の開始を直接の原因とする従前の共有関係と同一のものではなく、当事者の合意によつて新たに設定せられた純然たる通常の共有として民法第二四九条乃至第二六二条の適用によつて規律せらるべく、民法第五編第三章第三節の適用を受けるべきものではない。そうだとすれば被相続人相馬辰吉の遺産はすでに共同相続人の自由意思に基く協議をもつて有効に分割を了しているものと認められるのであつて右遺産分割の申立を却下した原決定は正当というべく、本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山崎寅之助 裁判官 山内敏彦 裁判官 日野達蔵)

別紙

抗告の原因

一、原裁判所は申立人、相手方、参加人等は被相続人相馬辰吉の遺産につき相続権を取得し遺産分割につき協議ができたので別紙目録(二)に記載の家屋を相手方の所有とし同目録(一)記載の土地を申立人の所有とする、と云う事となつた。

ところが其後右協議を修正して別紙目録(二)記載の家屋を相手方の名義に所有権保存登記手続をする際同目録(一)記載の土地を申立人、相手方、参加人等の共有とすることとなつた。

二、前項に記載する如き理由で原裁判所は申立を却下されたのである。

三、抗告人(申立人)は第一項前段に記載する如く遺産分割の協議ができているのにかかわらず相手方は登記手続をするにつき同意がせないので原裁判所に調停の申立をしたのである。

ところが調停が不成立となつたので審判になつたのであるが原裁判所は第一項後段に記載する如く協議が修正されたと云う事実を認定されたのである。

四、抗告人(申立人)は昭和三五年一月七日別紙目録(一)に記載の土地について共有とすると云う証書作成した事実は認めるが此の証書を作成したのは抗告人(申立人)が負債があるので今直に登記をすると差押を受くるおそれがあるから共有とすると云う証書を作成したらよいと司法書士が言われたので作成してもらつたのでこれは第三者に対する証書であつて相手方及び参加人等に対するものでなく当事者間では形式丈けのもので実質上は分割協議は修正されたものではないのである。

五、右事実を立証する為め司法書士を次回に証人として申請すべく準備中に原裁判所は申立却下の審判されたのである。

参考

原審判(京都家裁園部支部 昭三六(家)四〇五号 昭三八・一・一六審判 却下)

申立人 田辺秋夫(仮名)

相手方 相馬文男(仮名)

主文

本件申立を却下する。

理由

本件申立の要旨は、申立人と相手方との共同相続財産である別紙目録記載の不動産につき遺産分割の審判を求め、その申立の理由として、申立人・相手方はいずれも相馬辰吉の子であり、右相馬辰吉は別紙目録記載の不動産を所有していたところ、同人は昭和三四年一月二三日死亡し相続が開始したが、相続人の間に遺産分割の協議が調わないので分割の審判を求める、というのである。

按ずるに、公文書であるからいずれも真正に成立したと認める戸主相馬辰吉の表示にかかる戸籍謄本、筆頭者相馬文男の戸籍謄本、筆頭者田辺秋夫の戸籍謄本、別紙目録記載の土地・家屋各登記簿謄本、亀岡市助役作成の別紙目録記載の土地並びに家屋に関する各財産証明書、申立人および相手方に対する各審問、各本人訊問の結果、参加人本人に対する訊問の結果によると、相馬辰吉は別紙目録記載の不動産を所有していたところ、同人は昭和三四年一月二三日死亡し相続が開始し、同人の長男である相手方、四男である申立人、二女である参加人がその相続人であることを認めることができ、叙上認定に反する証拠は存在しない。

ところが、前記家屋登記簿謄本、証人田辺静男、同山本実の各証言、申立人および相手方に対する各審問・各本人訊問結果、参加人本人に対する訊問の結果、並びに相手方本人の供述(第二回)によつて真正に成立したと認める所有権保存登記申請書、申立人および相手方に対する各本人訊問(いずれも第二回)の結果により真正に成立したものと認める遺産分割協議書を綜合すると、昭和三五年一月頃相手方住所において右被相続人相馬辰吉の遺産分割につき申立人・相手方・参加人等話合の結果、右被相続人の前記遺産の内、申立人は別紙目録(一)記載の土地二筆を、相手方および参加人は同目録(二)記載の家屋を取得するにととなつたが、その後右申立人・相手方・参加人らの間において右話合の結果を修正し、別紙目録(二)記載の家屋を相手方の所有とし、同目録(一)記載の土地を申立人・相手方・参加人の共有とし、相手方から参加人に対し金二万円を交付することとして前記遺産について分割の協議がなされ、同月七日付遺産分割協議書作成の上、相手方は当時未登記であつた別紙目録(二)記載の家屋につき同年三月二一日所有権保存登記手続をなしたことを認めることができ、叙上認定を覆すにたる証拠は存在しない。

そうすると、右被相続人相馬辰吉の遺産につきすでに相続人らの協議によつて分割がなされたにもかかわらず、未だ分割の協議ができないものとしてその分割を求める本件申立は失当であるから、これを却下することとし、主文のとおり審判する。

別紙

目録

(一) 土地

(1) 亀岡市吉川町吉田沢○○番地

田 一反四畝二一歩

(2) 同所八五番地

田 五畝一歩

(二) 家屋

亀岡市吉川町吉田越田○○番地

(1) 木造瓦葺二階建居宅

建坪 三四坪六合七勺

二階坪 六坪

(2) 本造瓦葺平家建物置

建坪 一一坪二合二勺

(3) 木造瓦葺平家建便所

建坪 一坪四合四勺

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